地域で評判の高い塾には「経営感覚」に優れた先生がいた!

塾の発展は結局のところ先生次第と言えますが、本日は、その『経営感覚』についてより深い側面から探ってみたいと思います。指導と経営のバランスを上手く取りながら、地域に根差した塾であり続けるにはどうしたらいいか、考えていきましょう。

入塾生を増やし、収益性を上げるためには

子どもを持つ家庭にとって、どのような塾に子どもを通わせるべきかということはとても身近なテーマです。保護者は自分の子どもにとって最適な塾を探そうと、チラシや口コミ、ホームページといったありとあらゆる手段で情報を集めています。数ある塾の中から保護者に選んでもらい、入塾生を増やすためには、塾のオリジナリティが求められます。そのオリジナリティを形成するときに、「結果を出す指導をしてほしい」「しっかりと面倒を見てほしい」といった保護者のニーズをしっかりと押さえておく必要があるでしょう。

では実際に全国で成功している塾の例を元にご紹介します。

「価格」ではなく「選択の自由」

まず塾の価格設定についてですが、「他塾と差をつけるために一律で授業料を低めに設定し、安さをウリにしよう」と考えたとします。一人あたりの単価が低くても、多くの塾生が集まれば売り上げは確保できるように思えますが、実際には受講費の値下げで発展した塾はさほど多くありません。

また、気をつけなければいけないのは、安さのみを判断材料として入塾した生徒やその保護者は、教育に関する思いが弱い場合が多いということです。当然、後から特別コースや補習コースを追加することも難しくなります。さらに、目的意識のないまま「なんとなく」塾に通っているだけでは成績も伸びず、退塾するケースも増え、売り上げ減につながるでしょう。

もちろん、経済的事情で子どもの教育費を削らざるを得ない家庭もあることでしょう。保護者の収入がばらついている昨今、一律の価格設定やカリキュラム提供で塾の収益性を上げていくには無理が生じてきます。さまざまな価格プラン・カリキュラムを提供し、そこから自由に選べる仕組みを作ることで、生徒・保護者のニーズに応えていく必要があります。

部活や習い事で限られた曜日にしか通塾できない生徒や、授業料を抑えたい家庭には、教科やコースを絞った受講提案をしていきましょう。限られた教科の指導であっても、事前に何を目標として勉強していくか、生徒・保護者との話し合いは必須です。さらに家庭で勉強をする環境作りの提案をはじめ、ある程度強制力を持って宿題をやらせたり、期限を設けてテキストを解かせたりするなど、常にフォローする姿勢をアピールしていきましょう。

教育熱心な保護者や、経済的に余裕のある家庭には、理科・社会のプラス受講や「テスト2週間前対策コース」「個別・土日特訓コース」など、学校別や目的別のオプションコースを利用してもらう提案で単価を上げることが見込めます。

さらに、こうしたオプションコースでは定員制をとるのも有効な手段です。全員が受けられるのではなく、あらかじめ定めた人数しか受け付けず、しかも申し込み期限もきちんと決めてしまうのです。また、料金も通常より上げることでよりプレミア感が出るので、保護者の心をつかみ、申し込み数はぐっと増える可能性が高くなるでしょう。実際にこの方法で趣向を凝らしたオプションコースを実施したところ、受付開始と同時に即満員になったという先生方の声を耳にします。子どもに関心の高い保護者を集めることで、塾の運営が成り立つということをあらためて認識できます。

オプションコースの効果は、しっかり情報公開しよう

ニーズに応じたさまざまなオプションコースの実施に関して、もう一つ重要なことがあります。それはこうしたコースを受講した生徒の成績がどれだけ上がったかということを、受講生はもちろん、受講しなかった生徒や保護者に対してもしっかりと情報公開することです。例えば「テスト2週間前対策コース」を受講したことで、教科ごとの点数はどのくらい上がったか結果報告すれば「こんなに効果があるなら、次は受講しよう」と次回の申し込み増につなげることができます。点数だけでなく、受講生の声を掲示板に張り出したり塾内新聞などで配布したりすることも、同様に効果が期待できます。

塾のメインコンセプトを明確化する

保護者への教育理念に関する説明では、理論を明確化しておくことが重要です。「○○メソッド」「△△式」などと称してひと目でイメージが湧きやすいようにしたり、学習の過程を図式化して保護者に説明したりすることも手段として考えられます。体験会に生徒だけでなく保護者にも参加してもらい、指導方法や教室の雰囲気を肌で感じてもらうのもいいでしょう。また、教育理念や指導方針は3つ、多くても5つにまとめることでわかりやすく伝えることができます。見せ方、伝え方を工夫することで、先生方の思いをより正確に保護者と共有できることでしょう。

生徒に何かあればすぐに保護者と連絡を取って話をし、いいことであれば家庭でもほめてもらいましょう。また保護者が何か悩みを抱えていないか定期的な情報共有を行うなど、三者の連携に気を配ることが、塾への満足度アップにつながります。

入塾時に保護者が納得いくまで説明する

家庭の状況を知っておくことは、入塾時はもちろん、その後も常に意識しておくべき重要なことです。とは言え、簡単に把握できるものではなく、先生と保護者との間に信頼関係があってこそ知り得ることができます。

先生方は、体験学習や塾見学に来た生徒や保護者にどのように対応されているでしょうか。もちろん、どのような方でも受け入れるというウェルカムな姿勢も大切ですが、まずは塾や先生のことをよく知ってもらうという心構えが必要です。塾の教育方針やシステムを十分納得してもらった上で入塾を検討してもらうことが、ミスマッチを防ぐことにつながります。塾で対応できる生徒、塾で提供する教育サービスの効果が出る生徒を必然的に集めることができるでしょう。

また入塾時から教育に対する考えを保護者としっかり話し合うことで、双方の間に壁のない良好な関係が生まれます。あまり雰囲気が硬くなりすぎないように、時には笑いを誘うエピソードを織り込みながらも、先生自身の教育理念を伝えることで、保護者はより先生方を身近に感じることでしょう。退塾を防ぐことにもなり、安定した塾生確保ができるのです。

入塾後さらに、塾のファンになってもらうためには

地域にある塾の中から保護者や生徒に選ばれ、新たな入塾生を獲得したとしても、その後も継続して気に入ってもらうように仕掛けていかなければ、だんだんと気持ちは離れてしまうでしょう。「本当にこの塾でよかった」と根強いファンに変えてしまうような次の一手を投じなければ、退塾につながりかねません。

保護者や生徒一人ひとりとコミュニケーションを取り、先生の思いに共感してもらい、塾に来続けてもらうためにはどうすればいいか考えてみたいと思います。

ポイント1 生徒が毎日通える塾環境作り

子どもがその塾を気に入り、進んで通塾しているならば、大抵の親は安心して子どもを通わせ続けることでしょう。「生徒が毎日でも通いたくなる塾」は先生方にとっても、保護者にとっても理想的です。

やはり駅や学校の近くといった、通いやすく保護者の送迎もしやすい立地が望ましいですが、立地条件に恵まれずともたくさんの生徒を集めていらっしゃる塾も多くあります。例えば、緊張を和らげ集中できるベージュや青といった色を多く使ったり、椅子やテーブルをカフェ風にしたりと、内装を工夫することで居心地の良さを演出することができます。大がかりな改装ばかりでなく、小さな変化を実行することも大切です。教室に季節を感じさせる装飾をしたり、掲示物を小まめに新しいものへ張り替えたりと、たえず塾が変化している様子を形で表します。生徒が教室に飽きることを防ぐだけでなく、先生自身も「どうやったら生徒が喜ぶかな」と常に考えることにも結びつきます。また、来た順に席を自由に選べるようにしたり、友達同士や先生と談笑できる休憩スペースを広めに取ったりと、また塾に来たくなるような仕掛け作りもいいでしょう。

ポイント2 保護者、生徒との信頼関係作り

保護者に対して、まずは指導方針の理解を得て、子どもをしっかりと鍛え上げる道筋を示すことが信頼関係の構築につながります。志望校合格や学校での成績アップのために、先生がきちんと責任を果たす意気込みを感じるならば、保護者は塾の指導に積極的に協力してくれるようになるでしょう。塾と家庭が協力して子どもを育てる、という体制が整えば、子ども自身の安心感につながり、それが勉強へのモチベーションアップにつながります。

生徒が勉強に対してやる気を持ち続けるためには、将来どのような人間になりたいのか、未来像まで踏み込んだ会話をすることも必要になってきます。今の子どもたちが社会に足を踏み出すとき、与えられた知識を自分なりに深化させ、次の学びや発展的な問題解決につなげていく力や、自分が目指すものをやり抜く力が求められます。そのための手段として「いま学んでいることは何につながるのか」「次の目標はどこに定め、そのために何をすべきか」を自分で見つけ出すサポートを、先生が進んで行う必要があります。社会の問題に果敢に立ち向かい、困難を乗り越えるたくましさ、不安定な社会においても自己実現を追い求める精神力と人間力を鍛え上げることこそ、塾の先生に求められているのではないでしょうか。

ポイント3 教室便りを積極的に作りましょう

塾の広報戦略についても考えてみましょう。チラシやホームページ、ブログやSNSなど、さまざまな広告媒体がありますが、今回改めて見直していただきたいのが、教室便りの作成についてです。教室便りは先生方の思いや指導の内容をしっかり伝えることができる、塾にとって効果の高い広告媒体です。

毎月、発行物を作成している塾は多いと思いますが、「塾からのお知らせ」だけでなく、先生がどんな人間かが読み手に伝わる記事を載せている塾もあり、参考にされてみるのもいいかと思います。例えば「塾長のおすすめ本」「スイーツ大好き先生のお店紹介」など、先生の日常や人柄が感じられる内容はいかがでしょうか。教室では真面目な先生も普段はこんなことも考えているんだ、先生には楽しい一面もあるんだと読んだ生徒は親近感を覚えてくれます。

このような読み手の心をつかむ教室便りは、生徒だけでなく保護者を通じて口コミで話題になることが多いです。ある塾では、最初は生徒だけに教室便りを渡していましたが、「ここの塾長面白いよ」と保護者が知り合いにも渡してくれるようになり、印刷部数を増やしたそうです。チラシより営業的な感じがしない教室便りはほかの人に渡しやすいので、保護者から保護者へ広まり、問い合わせ増につながります。

また別の塾では、時事ネタや高校のオープンスクール情報、塾長が好きな映画の話などを加えたA4サイズ8枚の教室便りを作成したところ、生徒や保護者からの評判も上々だということです。塾長が丹精込めて作成する教室便りは、読み手の心をつかむのに十分な広告物であると言えます。

発展のカギは他塾とのつながりを作ること

社会的にも経済的にも大きな曲がり角に差し掛かっている今日の日本。日々予想もつかない変化をしていく中で、生徒と同様、塾の先生方もさまざまな情報を収集し、勉強していらっしゃることでしょう。そして地域に根差した塾であり続けるため、いかにして地域のニーズを拾い上げるか、試行錯誤されているのではないでしょうか。

今後は各地域の塾と連携しながら、全国の子どもたちが、社会に出ても通用する学力を身につけさせる指導をしていく必要があります。一つの塾ではなかなか難しいことでも、複数の塾が連携すれば、例えば施設を借りての勉強会やセミナーの開催、スポーツ大会や合宿といったイベントの実施も可能になります。

他塾と連携し、時にはライバル心を持ちながら自塾の機動力や経営効率を高めることで地域が活性し、厳しい教育市場を勝ち抜いていくような強い塾が増えるのではないでしょうか。塾運営や指導方法に留まらず、人材育成や業務効率化などについても意見を交換し合える関係の塾を多く見つけていただきたいと思います。そして、全国津々浦々に教育ネットワークを張り巡らすことで、これからの日本を作っていく子どもたちを協力して育て上げる環境に整えていきましょう。

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